「お月さまに会いたくて、雨雲を飛び越えてきたよ。
今日も素敵な夜空だね、いつも優しい光をありがとう」。
そう言いながらぶるぶるっと体を震わせて、雨雲の中で引っかかってしまったお星さまたちをお空に還した。
「いつもそこに居てくれるのは知っているんだけど、やっぱり一人で歩く草原は寂しくなっちゃうんだ。
羊って、みんなで集まって一緒に歩いていることが多いでしょ?
だからぼくは、楽しそうに歩く羊たちの群れに出会うと、ちょっとだけ悲しい気持ちになっちゃうんだよね」。
お月さまはただ優しく光って、そこに浮かんでいた。
「お空にはいつもたくさんのお星さまが光っているし、鳥や虫たちの声に合わせてみんな歌っていて楽しそうだね。
ぼくも草原に素敵な歌を届けてみたら、お空のみんなみたいに、誰かと楽しく過ごせるのかな」。
そんなことを話しているうちに、お日さまが見えてきた。
「また時々、こうして隣に座りに来てもいい?」
お月さまは、いつもより少しだけ明るく光って返事をしてくれているみたいだった。
羊たちの群れに出会ったわけでもないのに、寂しい気持ちが溢れてくる。
ぶるぶるっと体を震わせて、今度はその寂しい気持ちを振り払った。
一番の笑顔で「ありがとう、またね!」と、お月さまに伝えると、ぼくはもうお月さまを振り返らなかった。
急いで雨雲の中に潜る。
冷たい雨粒と、小さな氷の粒が体にぶつかって痛かった。
雨雲を抜けると、お日さまの光に照らされた草原が美しく輝いていて、まだひんやりと冷たい空気が地面を覆っていた。
遠くの方には羊たちの群れが見える。
ぶるぶるっと体を震わせて、雨粒と涙を振り払った。
ぼくは、お星さまたちの歌を歌いながら大きな木の根元を目指して歩くことにした。
お月さま、ぼくもう泣かないよ。
だって、きっとうまくいくから。

