穏やかな夕日に包まれた海辺に、
あの頃の私はもういない。
砂浜を歩きながら眺めていた、
私の記憶の箱には、
忘れたくない想いが溢れていた。
箱からひとつ、またひとつ。
手にするたびにその温度を感じる。
突然吹いた海風に、
私の想いが舞う。
ひらひらと砂浜に落ちていく想いたちの姿は、
桜の花びらのように美しく見えた。
目を奪われ立ち尽くす私の足元に、
波が押し寄せる。
まだ冷たい海水の温度を、
見つめていた。
波が引いた砂浜には、
私の足跡も、想いの全ても、
残っていなかった。
今ここにあるのは、
私と穏やかな時間だけ。
想いの箱と波

