ねぇ、聞こえている?
どこかに届く前に消えてしまうほど、小さくて自信のない声で問いかけた。
今の私には、これが精一杯だった。
ここにいることを知ってほしかった。
少しだけで良いから、
私に微笑みかけてほしかった。
私はずっとここで、あなたの名前を呼んでいる。
だけど、
いつまで待っても私の名前は返ってこない。
もしかしたら、
初めから
私には名前など無かったのかもしれないと思うほど、
どこからもその音は響いてこなかった。
私の背中に羽を生やし、
五線譜の波に飛び込めたら、
ゆったり優しいリズムで包んでもらえるかもしれない。
いつの間にか、
私は音になって空を昇っていることに気付いた。
鳥たちと一緒に歌を歌うことだってできた。
こんなにも柔らかな時間が流れる世界に、
もう体は必要ないと感じながら、
夜空を漂っているうちに、
月明かりに照らされた海原の
小さな波になっていた。
私には、名前すら必要なくなったのかもしれない。
私が私であることに、
形も名前も必要なかったと気付いたのは、
流れ星と一緒に宇宙を飛びまわり、
光の一部になっている時だった。

