カーテンを開けると、景色の色がいつもより濃く見えた。
外の空気を吸い込むと、どこか落ち着くような重さを感じる。
まだ、ここがどこなのかわからないまま立ち尽くしていると、傘をさした人が歩いて行くのが見えた。
そうか、、、今日は雨が降っているんだ。
そう理解すると、景色から音が聞こえ始めた。
雨は、いつだって歌いながら空から降りてくる。
木々の葉や、道路の上に到着すると、「私はここに降りたよ」と伝え合うように、ポトン♪ と可愛らしい音を奏でる。
雨たちはきっと、この世界に春が来たことを知らせるために、春の歌を届けにやってきたに違いない。
そんな歌を聴いて、小さな花が目を覚ます。
遠くから鳥の歌声が聞こえてくる。
少しづつ目覚め始める世界に、音は重なっていく。
きっともうすぐ、みんなが歌いだす。
気づけば、私も好きな歌を歌っていた。
呼吸をするのも忘れて歌っていた。
「だから私はいつも途中で止まってしまうんだよ」と、小さく呟きながら、「息をすることを忘れないように」と書いて、メモだらけになっているホワイトボードに貼り付けた。
忘れっぽい私は、こんな優しい朝があったことを、いつも忘れて生きてきたのかもしれない。
2026年2月25日 春を呼ぶ歌が降る朝

