世界が息を潜める頃、
冷たく冷え切った空気を部屋に迎え入れた。
闇に輝いているのは、たぶん北斗七星。
そこには、地球の歴史の呼吸が見えている気がした。
遥か昔の偉大な英雄たちは、
ちっぽけな私の存在なんて知るわけもなく、
ただそこで、
あまりにも眩しく自由に輝いている。
遠い宇宙の彼方に存在しているのに、
その背中は大きくて、
どれだけ手を伸ばしても届くはずもない。
ただ見上げていることくらいしかできない私は、
せめて同じ場所にいると感じたくて、
大きく深呼吸した。
私の胸の中の、
吹き溜まりのような場所に残っていた想いを、
ひんやりと冷たい空気が浄化していく。
細く吐き出した息は、
真っ白な雲のかけらになって空に昇っていった。
それを見送っていると、
私の作った雲のかけらも、
英雄たちのいる場所にいつか届くんじゃないか、
そんな気持ちになれた。
だけど、これはきっと夢の中。
冷たい風が頬を撫で、
私をまだこの世界に引き留めていた。
夢の中? そう、私はずっと夢の中を生きてきた。
私の現実は夢の中にあって、
現実だと思って生きてきた世界こそが
眠っている場所だったのかもしれない。
そんなことを考えながら、
カーディガンの首元をぎゅっと握って顔を埋めた。
ずっとこんな夜が続けば良いのに。
眠ったらまた朝が来る。
私は今どこにいて、どこからが夢で、
どこからが現実なのかも曖昧な、
まどろみの中にいるのかもしれない。
2026年2月12日 英雄たちのいる場所

