選ばれし勇者と選ばれなかった勇者

初めまして、私は勇者です。

勇者と言っても、性別は女性です。
世の中の持つ勇者のイメージは男性だという事で、残念ながら最終選考で『選ばれなかった勇者』です。


君が男性だったらねぇ〜と、審査員の皆さんも悩んでくれたようです。


選ばれし勇者になれていたらなんですが、まぁ、みなさんよくご存知のように、街にある伝説の剣を抜き、みんなに讃えられながら、仲間と共に魔物を退治する旅に出ることも許されます。でも、選ばれなかった勇者は何も許されません。

そして、選ばれし勇者を輝かせる為にも、私のような勇者の影になりうる存在は、そっと排除されることになっています。


あ、これ、あまり知られていないことなので、内緒にしておいてくださいね。

ここだけの話です。w

そんな私に許されるのは、人里離れた無人島でひっそりと暮らすことくらいなんですよ。

目立った行動は厳禁です。

選ばれし勇者様たちの放つ輝きを曇らせてしまうことにもなりますので。


とにかく慎ましく、ただ静かに暮らす事だけが許されています。

平たく言うと、島流しですかね?

命があるだけ良いと思え、みたいな感じですよ。


街の人たちもね、最終選考までは私のことをとても応援してくれていたと思います。


でも、選ばれなかった瞬間に、そんな事実は無くなるんです。


みんな、選ばれし勇者にしか興味を持ちませんし、富を産むのは、選ばれし勇者ですからね。仕方のないことです。


毎晩、月を見上げる度に思うわけですよ、あぁ、私も選ばれてみたかったな、なんて。

ちょっと勇者のように讃えられてみたかったな、とか思ってしまうんですよね。


ええ、ええ、わかっていますよ、そんな願いはもう叶わないって事くらいは。

でも、そんな風に想いを馳せるくらいは自由でいたいんですよ。

あ、すみません。こんなところにずっと住んでいるもので、人間を見つけるとつい話し込んでしまうんですよね。

私の悪いクセです。


どうぞ、観光を楽しんで来てくださいね。

一応、私はいつもこの辺りで過ごしているので、何かあったら声をかけてください。


野生動物たちにはくれぐれも気をつけてくださいね。

あくまでも、ここは彼らの縄張りの中なので、彼らの生活を荒らすような事があればすぐにやられますんで。


じゃ、私はちょっと木の実を探しに行ってきます。

また!

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