いつも、天井を見上げながら思っていた。
意識を交換して、誰かの1日を過ごしてみることは出来ないかと。
例えば、友達と。
例えば、ワンちゃんと。
例えば、テレビの中の人と。
だけど、どれだけ頑張ってもそれはできなかった。
体と意識はどうやって固定されているんだろう。
寝ている時は体にいる気がしないし、時々自分の寝ているところを上から見るときもあるのに。
交換できないと知った私は、とてもがっかりした気持ちになった。
お花屋さん、レストランのお姉さん、ペットショップの店員さん、外科医、獣医さん、漫画家、私はたくさんの夢を見た。
高校生になって、何もかも選べなくなった状況に、私はもう一度、一番最初に見た夢を思い出した。
誰かの1日を交換して過ごすこと。
それは、女優さんになることだと思った。
考えるより行動。当たって砕けろ。そんな私はすぐにいくつかのオーディションに応募した。
オーディション会場には、個性的な人たちがたくさんいた。地味で個性も何もない私が受かるわけない、会場でいきなりテンションだだ下がり。
だけど、書類選考に残った事自体奇跡じゃないのか?何の取り柄もない私がだぞ?
どうせ落ちるなら、この際思い切れ。そんな羞恥心捨ててしまえ!勢いのまま自分の番がまわってきた。
オーディションの課題は、その場で審査員に言われたことをやること。
私は1つのセリフを言い渡されて、演技をすることになった。もちろん、演技なんてした事は無いし、練習も何もなくここにいる。
サプライズプレゼントを渡された時のリアクション。
貰ったプレゼントの中身が何なのか、誰に貰ったのか、自分の今欲しいものが何なのか、それはどれくらい嬉しいものなのか。
そんなイメージを少しの間膨らませて、演技開始。
エアーで箱を受け取る。大きさはこれくらい。相手の顔はこのくらいの目線の先。お礼を伝えながら、開けたくて仕方ないってワクワクを女の子らしく伝える。
そんな演技を始めると、その人物が私の中に入り込んできたみたいだった。
体中に、ぞわぞわっと鳥肌が通り過ぎる。
私は、何とかその審査を終えた。
しばらくして、家のポストには合格通知が届いていた。
玄関先で開封して、飛び上がるほど嬉しかった。
急いで家に入って、親たちに報告した。オーディションを受けたことすら伝えてなかったことも忘れて。
そんな夢を見ていたあの頃の私は、今もここにいる。
ひとりぼっちになってしまったけど、あの頃とは違う私になれているし、思いもよらない形でここにいるよ。
あの日の私に手紙を書こう。
頑張り屋さんのあなたへ。君は全然へっちゃらで、どこまでも自由に好きな姿になれるよ。だから泣かないで。私がここで待ってるからね。
可愛らしいシールを貼って封筒を閉じた。
いつかの私と、未来の私が出会うその日まで、この宝箱にそっとしまっておこう。
みんなの笑顔を願ってプレゼントを準備するサンタクロースのように、やっと自分に素敵なプレゼントを贈ることができそうだ。
こんな時が私に訪れたこと自体が、今の私にとっての何よりのクリスマスプレゼントなのかもしれない。
*この物語は、2025年12月9日に note と X に投稿したものを転記したものです。

