🎄『プレゼント』 12月10日

Image by Grok

強くなりたかった。

君を守るために、誰よりも強くて、優しい人になりたかった。

そのためならなんだってする覚悟があった。この命をかけて君を世界一幸せにしたいと思っていたから。


ある日、見知らぬ女が君を横目に鼻で笑って通り過ぎた。

そんな日の夜は、今度の休日に新しい口紅や洋服を選びに行こうと誘った。

もちろん、いつものラフな格好だって素敵だと伝えたら、君は少女みたいな瞳で、飛び跳ねてはしゃいでいた。

そんな笑顔が好きだった。


またある日は、見知らぬ男が君を憐れむ目で見て、悪態をついてきた。

君を悲しませるような奴は絶対に許さない。そんな時はいつだって、相手が怯むくらいの正論を突きつけて追い払った。

君の価値がわかる奴なんて、この世界にいないのかもしれない。

僕を除いては。


ある日、君はいつもよりお洒落をして楽しそうに出かけて行った。

その日も、次の日も、君は帰って来なかった。僕は心配で心配で眠れない夜を過ごした。

久しぶりに会えた君は、どこか雰囲気が違って見えた。

美しさに磨きがかかった君へのクリスマスプレゼントは、君の好きな大きな花柄のスカーフとワインを買うことに決めた。

君が綺麗になって、楽しそうにしている姿が嬉しかったから。



クリスマスの日、僕は近所の花屋で、君の好きなバラの花とかすみ草の小さな花束を作ってもらった。

君の家へ向かう足取りは軽やかだった。

君を驚かせたくて、チャイムを鳴らした後、急いでプレゼントと花束を背中に隠した。

ドアの向こうな近づく足音に心を踊らせている僕がいた。

君はきっと喜んでくれるはずだ。


ドアが開くと、部屋から楽しそうな声が響いてきた。

今日は、知り合ったばかりの男とホームパーティーの約束をしていたと告げられ、そのままドアは静かに閉まった。


楽しそうな笑い声が、冷たい空気に響き渡る。

足元に散らばった、赤い花びらは、僕が吐き出した血のようだった。

冷たい頬を伝う生暖かい雫は、僕が生きていることを主張しているみたいだった。


たぶん、ぼくはここに立っている。

たぶん、ぼくは今泣いている。

たぶん、もうここはぼくの、いえじゃなくなった。



ぼくの足元は、少しずつ白く色が変わっていた。

そうだ、今日はクリスマスなんだ。

ぼくは、今日みんなでケーキを食べるのを楽しみにしていた。

大好きなチョコレートのプレートは、じゃんけんに勝って絶対食べるんだって決めていた。


そんな景色も、いつの間にか真っ白な雪に包まれて、何もなかったみたいに、町は綺麗にラッピングされていた。

後ろを振り返ると、小さな足跡だけが付いて来てくれていた。君だけはいつもぼくの親友だよ。

踏みしめる足は、冷え切って感覚が無くなっていた。


ぼくが大きくなったら、もっと強くなったら、またママは笑ってくれるかな。

ぎゅっと手を握りしめて空を見上げた。


*この物語は、2025年12月10日に note と X に投稿したものを転記したものです。

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